範宙遊泳「労働です」を観ました

2011年3/5(土)14:00 範宙遊泳「労働です」@横浜 STスポット

Corichでおもしろそうな公演がないかと探していたところ見つけたのがこの公演でした。
「労働です」というタイトルも気になったのですが、何より範宙遊泳のWebサイトの独特な雰囲気に惹かれたのが目に留まった理由です。

ワンダーランド wonderland」というサイトのクロスレビュー企画で取り上げられるなど、どうやら注目の若手らしいのですが、とても楽しい公演でした。おもしろいというより楽しいという言葉がピッタリで、演劇を見慣れていない人でも楽しみやすい公演だったと思います。ただ「労働です」というタイトルにそぐう内容ではなく、物足りなさも感じました。

福原という司会の男が公演を進行するというちょっと変わった趣向。
舞台はとある工場です。工場には地球部と製造部という部署があり、3名の新人が地球部に配属されます。
地球部は男性中心で、その地球部のシフトリーダーである斉藤と工場の主任である高木の仲はあまりよくありません。一方の製造部は女性中心です。熊川という女性工員は男性に人気があるようなのですが、同僚の浅川と主任である田中たちがそれをやっかんでいるのか、こちらも人間関係に問題があります。

お芝居はTVのバラエティ番組のような様相で進行します。
司会の福原が工員にインタビューのようなことをするほか、女性工員たちによる「ごきげんよう」ようなトークコーナー、チームにわかれての「たたいて・かぶって・ジャンケンポン」対決、ねるとんコーナーありと盛りだくさん。
工員の川口と主任の高木の会話をドキュメンタリーのように撮るシーンや、横浜駅からの街頭インタビュー中継もあり、いろいろ趣向がこらされており、楽しく飽きることのない2時間でした。

これらのTV的趣向は演劇初心者にも公演を楽しく観やすいものにしていたと思います。
TV的趣向のいろんなコーナーを通じて、各人物のキャラやポジションが浮き彫りとなります。
これはまさにTVのバラエティ番組と同じ構図です。(ヘキサゴンのおバカキャラなんかがわかりやすい例でしょうか。クイズを通じておバカキャラが明らかになり、おバカキャラ同士のライバル関係が出てきたりします。)
公演内でも司会者が各登場人物を「疑惑の女」や「妖怪」などのあだ名で呼んだりしていましたが、これもよくバラエティ番組で見る光景です。

TVで慣れ親しんだかたちで工場内の キャラ/ポジション=人間関係 があらわになっていくことで、演劇を見慣れていない人でも、楽しみながらとても自然に工場の人間関係を理解することができるのです。

こういった趣向は楽しかったのですが、タイトルにもある労働についてはあまり掘り下げられていませんでした。労働につきものである生活やお金についてはほぼ触れられておらず、労働というより人間関係について描いたお芝居でした。
労働において人間関係が大きな問題であるのは確かですが、お金や生活のために労働をするのだからそこを避けて通れないと思うのです。(今の職場の人間関係がいやだけど、給料がいいから辞められないとかあるわけですし)

そもそも労働についてあつかう意思があったのかも疑問ではあるのですが、街頭インタビューは労働についてでしたし、タイトルも「労働です」なので、観る方がミスリードされてしまう可能性を意識する必要はあったでしょう。

ただ、TV的趣向の楽しさだけでなく、舞台美術や映像のビジュアルも魅力的でとても楽しめる公演だと思いました。